縦書きブログ「八軒家南斉」

WEB1グランプリ 準グランプリ受賞

2005年6月 9日

六月九日(木)

思い立って草深い滋賀県の信楽を訪れたら、街じゅう、たぬきだらけだった。駅ホームから、国道沿いの陶芸店まで、大小のたぬき軍団を勢ぞろいさせている。
古くから縁起物で有名な超ロングセラーなのだが、どいつもこいつも、あまりに、画一的な顔なのでおどろいた。おびただしい数だが、よくみると基本形は、ワンパターンだ。どこにいっても、同じような顔つきのたぬきばかり。不気味なほど没個性の似たもの狸の大集団だ。おおげさにいうと、これは、日本文化特有の現象なのか。

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信楽の狸一号は、いつごろだれによってデザインされたのだろう。わからないという。むかし、オリジナルを考え出した作者のアイデアは、たいしたものだが、これから、世界を視野に思い切った新製品の誕生が待たれる。

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人口500万人の小国フィンランドは、デザイン立国が国是で、世界相手に商売してきた。
滋賀の山奥、信楽県立「陶芸の森」へいってきたのは、ちょうど開かれている「北欧のスタイリッシュ・デザイン―フィンランドのアラビア窯」で、現代フィンランド陶器の軌跡を探りたかったからだ。
フィンランドは、日本へも、ガラスや陶磁器など、高い水準のデザインの量産で、価格競争を回避しながら、愛知万博を機に攻勢をかけてきている。
デザインは、作家しだいである。北欧各国のガラス、陶磁器会社は、生き残るため、この百年の間に、ある時期、外国からデザイナーを招いて自由に競争させ、活路をひらき幾多の名作が生まれた。一国のデザインパワーを活性化するためには他国デザイナーとの交配・混血が必要だったのだ。
このようなアラビア窯のしたたかな革新の歴史は、信楽の窯元各社にも十分参考になるはずだが、果たして、地元ではどう受け止められたのだろう。

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ここ信楽の伝統たぬきは、ほうっておいても、縁起をかつぐみやげ物で売れているせいか、新しいデザインへの競争投資は見受けられないようだ。でんとあぐらをかいてはいないか。
視野を世界に広げ、思い切って賞金を弾んで、外国のデザイナーから、ざんしんなアイデアを募集してはどうだろうか。
いでよ、新しいたぬき、アフターたぬき。陶芸の里のスター誕生が期待されるところなのだが。
陶器には使えないが、ぼくもたぬきのスケッチをしてみた。かれが敷いているおおきな座布団状のものは、ごぞんじ八畳敷きのしろもの。マウスを動かして、一気描きの筆でゆっくり描いた。

投稿者 nansai : 2005年6月 9日 10:23