2005年12月15日
十二月十五日(木)
耐震偽装、ねずみ一匹ではない
「私一人でできることではない。」と姉歯元建築士は証言した。不十分ながら国会喚問で、耐震偽装問題の全容が、おぼろげながらみえてきた。
計算書のデータ偽造を直接おこなったのは、元一級建築士だが、そうさせた取引の連鎖構造は、単純だったように見える。入れ子構造になっている点では、日本の山林を荒廃させた松枯れ病に似ている。(松くい虫、マツノマダラカミキリが犯人だと思ったら、そいつは運び屋で、病原は、マツノザイセンチュウだった。)
今回は、耐震偽装に直接手を下した犯人は、姉歯氏とされているが、かれをねずみとすると、かれの体内には、建設会社、経営コンサルタントの法令違反・安全無視の強力コストダウン・ウイルスのカプセルが埋め込まれて、外からの指令どうりに動くしくみになっていたのがみえてきた。
今回のコンサルタント連合は、ビジネスホテルのばあい、建設コストをできるだけ抑えて、投下資金を年利12%に回せる計画を、客にすすめていたという。
人命にかかわる重大な違法であっても、コストダウンに協力しなければ、ねずみは、仕事からはずされるのだ。
業界では、「経済設計」といういいかたがあるらしい。
むだをとことん排除するトヨタの「カイゼン」と、どこが違うのかと居直るむきもある。
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コストを、どこで切り詰めるか。このばあい、それが外から見えない鉄骨だった。コストを切り下げるのに、地震に耐えるぎりぎりの安全基準も無視して、禁断の構造設計に手をつけて、鉄骨の数をへらし細いサイズを使う。
しかし、プロとして、それをやっちゃおしまいだ、というのが、耐震基準無視だったのだろうが。
骨を抜き壁を薄くして安全を無視する(詐欺行為そのものだ)と、販売促進上も有利になるのは、皮肉なことだ。見た目のインテリアからみれば、柱が細く、部屋空間が広々とお買い得に見える。おおきな家具がゆったり置けると、構造には疑いを持たない未経験の素人客に、好評を博すのは当然。
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今回の業者連合は、安全を無視して、震度5か、6で倒壊の確率の高い建物を、地震が起きるまでは「ばれない」という、自分たちにまことに都合のいい暗黙の期待のもとにどんどん建てたに違いない。
万が一、地震で倒壊しても、大都市での被害は、広い範囲で同時多発するから、個別の無数の物件の安全基準違反がさかのぼって問われることはないという見通しを持っていたのだろう。ここがこわいところだ。
とにもかくにも国の審査が通り、建ちあがってしまえば、もうばれるわけがない。内部告発は、想定外だったろう。
かれらは、阪神大震災では、震災後に、建物、道路など倒壊した物件の手抜き工事の摘発など、総括されていないのを見守っていたのだろう。あの時は、大混乱の中、一日も早く復興を急ぐという名目で、原因究明に時間がさかれないまま、大急ぎで倒壊した建築物の廃墟が撤去されたのではないか。結果としてうやむやになり証拠隠滅になってしまったと考えられる。
ならば、くやまれる。もし、あれほどの犠牲を払って得た歴史から、なにも学習できなかったとすれば。
今回も、さっそく自民党中枢から、業界寄りの声が聞こえてきた。
「今は、たいへんなときだ。犯人捜しなど、振り返るゆとりはない。前向きに被害者の救済に取り組むべきだ。さもないと、業界が疲弊破綻してしまう」と。
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今回のコンサルタント連合の首魁企業は、全国に数十社に及ぶ同じノーハウを奉ずる同志集団を形成しているときく。この危険なコストカッター連合が、もしマツクイムシとしたら、だいじょうぶかなあ、慄然とせざるを得ない。
自分の経験だけでは価値判断できない商品を選ぶとき、政府の規制基準も100%信用できない。改めて得た教訓は、平凡だが、つぎのようなものだ。
一、目先や見た目にまどわされないこと。安物買いの銭うしない。お買い得には注意、なにかがある。
住宅、マンションやリフォームなど、ふなれな買い物のための消費者教育は、社会の義務になろう。
二、最悪のリスクを予測せよ。安全への投資は高いが、長い目で見れば、結局は安くつくものだ。そのための費用と時間は、自分で負担せよ。コストに織り込んでおかないとやばい。保険もそのひとつ。
投稿者 nansai : 2005年12月15日 15:34


