縦書きブログ「八軒家南斉」

WEB1グランプリ 準グランプリ受賞

2006年3月29日

三月二十七日(月)

よかったぞお、ちょいワル爺さんテナー

土曜日の「春待つ午後のカンツオーネ」は、すばらしかった。ちょい悪爺さんテナーの面々、ご苦労様でした。
年齢をまったく感じさせない美声の三人の歌い手の合計歳数が二百歳を越えるという、高齢者時代の幕開けにふさわしいパフォーマンスではあった。
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いやあ、よかったねえ。
いずれも、退職しても歌ではバリバリの現役。本格的レッスンを受けたテナー、バリトンのトリオの揃い踏みだ。ひとりは、アマチュアながら、オペラにも出演しているという。イタリー語の歌詞はちんぷんかんぷんだったが、天地を揺るがす地響きしそうな声量だった。「のど」自慢なんかではない、全身これ楽器なのだ。年齢は、まったくカンケイないのに感動した。
雷のようにすみずみまで声が通るから、せまい店内がそのまんまロイヤルボックスだ。この至福の出会いにめぐまれた、かぶりつきの聴衆は、総数20数名。ぼくをふくめ、やや、「ネコに小判」というかんじであったが、圧倒されながらアンコールして日本語で「フニクリフニクラ」もみんなで唱和できたし、ネコたちも寄贈されたチーズ、ワインで盛り上がり、会費1500円のもともとれて、拍手喝さい、大満足。
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興行的には、さして広くないイタ飯レストラン「マリアン」(定員30名?)のセンターテーブルが意外にもがらあきで、カラオケ装置担当アルバイト君の日当分が赤字、という結果は、ちょっと残念。
ここ八軒家界隈は、京からの船の往来で、古くから賑わう交通の要衝だった。世界遺産に指定された熊野詣の起点なのだ。なのに、いまは、週末土日に、さっぱり人出がなくシーンとしてさびれている。近くのマツサカヤも三越も撤退してしまった。大きなお世話だろうが、なんとかカンツオーネの歌声で活性化し、地域の文化高揚に役立てたいというソーダイなもくろみだったのになあ。
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ポスターに書いてあったが、「カンツオーネ」って、なんのこっちゃ?魅力がぴんとこなかったのか。ご近所からの入場者が、さっぱりで期待はずれだった。
老若をとわず女性の勧誘にも一工夫が必要か。あれほどのセクシーな名演だったから、「懐かしのイタリー民謡」とすればよかったかなあ。落語の「寝床」にでてくる大家さんの義太夫では決してないのだが。

こりない「マリアン」では、つぎの催しは、「トルコ音楽の夕べ」らしい。成功を祈ろう。

投稿者 nansai : 11:33

2006年3月15日

三月十五日(水)

チーズ店の看板完成

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おくれていたチーズ専門店の看板が出来上がったと連絡があった。京阪の駅をあがったところから、あるいて二分の交差点から、みえる。案外ちいさくて控え目だが、やれやれ、面映い感じだ。
おそらく本邦初めての、パソコンで、マウスで描いた看板だろう。看板やさんもびっくりの、怪挙というべきか。

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まずは、開店おめでとうございます。
この店は、煙突のような細長い二つのビルの谷間に、ちょこんとうずくまっている。バートンの絵本「小さな家」とそっくりで、なんともいえない愛嬌がある。
チーズという商品は、各国の種類がいろいろあって、奥が深い。プロのお客が多いのだろう。末永くご繁盛を祈りたい。

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ぼくも、どさくさのにわか勉強で、多少のウンチクが身についた。もう伝説になった話だが、選挙前、小泉さんが、解散に反対しにいった森さんに、なにもなくて缶ビールと干からびたチーズしか出さなかったという、いわくつきの高級チーズ、ミモレットも、教えてもらった。

投稿者 nansai : 15:21

2006年3月 6日

三月六日(月)

フィギュア金メダリストの荒川選手の「イナバウアー」という、足を180度開き、上体を大きくそらす演技が大評判らしい。「女王の舞」は、ぼくのお絵かきには絶好のテーマである。さっそく、かば選手に挑戦してもらうことにした。

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「ユーレイズミーアップ」の曲に乗って滑走するところを、新聞の写真をみながら、とりあえず、マウスをぐるぐるまわして描くのだ。やや上体のそらせ方が浅いが、おなかがでっぱっているのでしかたがない。

もう少し手を加えたい、と思うときは、一呼吸おいて、または、しばらく忘れて、あらためて、プレー再開することにしている。あわてて続けると、こんな絵でも描く集中力が急激に減退するからだ。で、かば選手も、一呼吸置いてみた。
スポットライトを浴びせる。興奮した観客から花束が降ってくる。下手な考え休むに似たり、とはいうが、ましなアイデアは後からでてくるものだ。

ほい、しまった。かば選手の足の向きがおかしい。
気づけば、すぐに直せるのが、MSペイントのしたたかな強みだ。足の向きをかえたついでに、かばの顔をクマに入れ替えてみた。「マリアン」の壁にかけてもらおう。

だれにも教わらないしろうとながら、ぼくは、無料ソフトのMSペイントを使って、マウスをくるくる動かして描く。
デスクトップに、ペイントのショートカットがだしてある。起動すると、瞬時に白い画面があらわれる。
さ、いつでもどうぞ。アイデアを手っ取り早く「かたち」にするには、紙や筆や絵の具の準備がいらないからMSペイントが、いちばん早い技法ではないだろうか。でも、プロで、あえてMSペイントを駆使する人はいない。
性格がアバウトなくせに、せっかちなぼくは、このMSペイントの、思いついたら、すぐに描けて、「いっちょう、あがり」まで、一気に、仕上げられるところが気に入っている。
ある種のデジタル塗り絵だから、線で形をとり、なかを色で塗りつぶすのは、あっという間だ。
思いついたらすぐ、が、移り気で飽きっぽいぼくのやりかただ。何しろなんでもすぐ忘れてしまうのだから。せっかくの(ひとりよがりといわれても)いいアイデアも。
デジタルの恩恵には、感謝している。

投稿者 nansai : 17:46

2006年3月 3日

三月三日(金)

祝開店チーズ専門店
週末は、ひょんなことで、もぐりの看板屋さんになった。パソコンに向かい、看板の下絵をいろいろ描いた。
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これまでは、パソコンのうえにバーチャルで無責任な絵ばかりマウスで描いてきた。店というリアルな場にデビューする看板の絵は、はじめてだ。責任?頼んできた人にあるよねえ。

ご近所の八軒家船着場跡付近に、チーズの専門店が開店することになった。
日本のチーズ販売の草分け卸店が、デパートの売り場以外に、今回、創業の地で小売を始めるという。これまでも月二回のガレージセールが人気だったが、常設の売り場ができた。
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ご近所のよしみで、看板の絵(といっても小さなものだが)をご祝儀に描くことになった。初土俵を踏む力士に、化粧回しをおくるようなものだ。
新装店のテントの上の空間がぽっかり空いていてさびしい。ここになにかチーズに関する絵のようなものがあったら、ということで、イタ飯屋マリアンの大将から話しがきたもの。
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さて、絵を描こうにも、ぼくは、チーズの知識にとぼしい。世界をまたにかけたチーズ博士(ややこしい専門の資格をお持ちである)の社長夫人の指導をいただきながら、こちょこちょマウスを動かしていたら、いくつか、おもしろそうなのができた。
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牛さんチーズとヤギさんチーズを描き分けることにしたのだ。こんな風に、チーズの知識など、知らない世界をにわか勉強しながら、図鑑などと首っ引きで描くのは楽しいものだ。
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来週には、看板ができあがるらしい。心配でもあり、たのしみである。あ、そうそう、店の名は、FROMAGE(フロマージュ)土佐堀通りの、熊野街道の入り口にある。
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投稿者 nansai : 17:52

2006年3月 2日

三月二日(木)

耳からヒモをたらす習慣 
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水道管を二つに割ったようなリンク上?をすべるから、ハーフパイプというのだそうな。思い出したくもない日本惨敗のトリノのスノーボード競技。大音響のロックが会場に流れている。
顔がアップになると、アメリカ代表の選手たちのかぶっているフードから、細いヒモがのぞいているのがみえた。なんだろう。そのコードは、ユニフォームの内ポケットのアイポッドへつながっているのだと、後で知った。

スノーボード競技では、アメリカチームが、男女ともに金をとった。
選手には、平常心を保つコミュニケーションのためのジャケットが与えられていた。ウエアには、ケータイと音楽端末のIポッドをしまう内ポケットがつくってある。イヤフォンは抜け落ちるから、フードのなかにスピーカーがステレオでセットしてある。心理戦に勝つためのいたれりつくせりだ。

選手は、競技直前まで極小型の音楽プレーヤーから、自分好きな曲を聴き、心を静め、そして、高めてゆく。
優勝したハンナ・ティータ選手は、ファイナルラン直前、踊っているように見えた。恋人のバンドを聴いていたのだ。

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ケイタイで、ぎりぎりまで母親と会話できる。「じゃあね、ゆくぞお」という具合だ。最後まで平常心が保てる工夫がこらされていた。

オリンピックの金メダルは、公式スポンサーではなくて、一円も出していないアップル社がとったのだ、すごいビジネスチャンスをものにしたと、あちらのメディアは報じている。

若いころから、ウオークマンやIポッドのような音楽鑑賞キカイとは、ぼくは、無縁の人間であった。
セントラルパークでジョギングしながら、音楽をきくがらではない。電車の中で、隣の若者のイヤフォーン越しに、しゃかしゃか音がもれてくるのにはマユをひそめる口だった。

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ところが、ふとした縁で、SDカードに録音された音楽をイヤホーンできく超小型の機械、つまり最新版ミュージックプレーヤーを入手するはめになった。ぼくの知っているウオークマンよりもはるかに小さい。
親指のつめほどのSDカードには、 128メガで、延べ94時間録音できる。

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意外や意外、これが極めて快音?快適だ。オンチに近い老いたぼくの耳にも、いい音だとわかる。周囲の誰にも気兼ねせずに聴ける自分専用のリスニングルームである。
そして実に軽い。シャツのポケットに入れたことをわすれてしまうほどの、たった50グラム。
そんなある種の引きこもり部屋にはいりこみ、外界の雑音を締め出して、マイペースで歩けるわけだ。

地下鉄の駅で歩く人間は、二種類だ。耳の穴からヒモをたらしている人と、耳の穴になにも入れていない人だ。
節をころっと曲げたぼくは、耳の穴からヒモをたらす部族に帰化することにした。
初めて気づいたのだ。50年前の古い曲をCDからアットランダムにいれて、いまぼくが何を聴いているか誰にもさとられずに、好きなだけボリュームを上げてあるきながら聴くのも、なかなかオツなものだと。だれのめいわくにもならず、きわめて自己中心的な閉鎖空間が生まれる。

人気のない京阪電車のプラットフォームのはしで、むかしむかしのリズムに合わせて、つま先が動く。ついステップをふみたくなる。パブロフのイヌだね。他人が聴けばカビくさい半世紀も前のメロディにのって、条件反射でからだが動く。
われながら心配になってきた。あの歳で耳からひもをぶらさげている。挙動があやしい。「ちょいワル」ではなくて、あたまのへんな爺さんに思われはしないか。

ほかのヒモたらし族の様子をうかがうと、なにを聴いているのか、若者たちは一様に無表情で沈うつな表情をうかべている。

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ヘッドホンで浮世から隔絶された世界にいながら、かれらが墺々としてたのしまない風情であるように見受けられるのは、どうしたことか。
もちろん、年配者では、耳からのヒモたらしは、ほとんど見当たらない。

ぼくは、寝る前にベッドで腹ばいになって本や雑誌をを読むくせがある。どうせすぐ寝てしまうのだが、このときも、ヘッドホンから低く流れるジャズピアノなんかいいねえ。
何をいまさらと笑われるだろう。食わず嫌いで、そんな風に、音楽をヘッドフォンで消費する習慣がなかったぼくには、おそまきながら(おそすぎるかな)新鮮な体験だ。これも、扱いが超かんたんになったデジタルの進歩の恩恵だと思う。

ある日、毎月通院している大病院の待合室に、ぼくは目立たぬように、耳からひもをたらして、はいってみた。ここは、明らかに場違いな雰囲気だ。診察を待っている高齢者たちは、当然、だれひとりヒモたらしはいない。みな一様に黙然と大型テレビを見上げている。
同じ患者でも、こちらは、別室感覚で、軽いピアノジャズを聴きながら、(聴いていることを誰にも悟られずに)穏やかな気分である。いいのかなあ。
しかし、身の回りにこのような自己中心環境を張り巡らすことには、異論もあろう。だいいち、耳にイヤホンをさしこむと、なにもきこえず、高齢者は危なくて、道が歩けない。

投稿者 nansai : 14:30