縦書きブログ「八軒家南斉」

WEB1グランプリ 準グランプリ受賞

2006年7月10日

七月十日(月)

ナカタ引退報道のけたたましさ

nansai060710-0.jpg

サッカーの中田選手が、突然の引退発表。それをめぐっての、この国のマスコミの過熱反応ぶりに、たまげた。
中田は、記者会見はせず、NAKATA・NETというホームページ上で、ごあいさつというよりは、所感のかたちで引退を発表した。
挨拶代わりの作文が、これほど砂嵐のようにマスコミに空高く巻き上げられ、日本中すみずみにあっというまに伝播させた例はかつてなかった。

nansai060710-1.jpg

マッチ一本、火事のもとだ。ネットでの火種がマスコミで増幅され燃え広がり燎原を焼き尽くした。
新聞が号外を出した。夜のニュース番組の司会者が、全文を朗読した。全国の小中教育関係者から、教材に使わせてほしいと申し込みが殺到、その数が千通以上。というから、驚いた。一部の辛口評論家が「青臭い」と評するモノローグは、新聞のコラム「天声人語」にまで引用された。
本人が記者発表したわけでないから、じかに取材できない。ナカタネットにマスコミもファンも殺到して、アクセスが一千万を超えたと報じられた。
ふだんナカタネットを見ているひとは、サッカー好きのナカタの熱烈ファンだろう。ふつうのひとは、スポーツ選手のサイトをのぞいたりしない。アクセスのすべもしらないひとが大多数だ。

nansai060710-2.jpg

ネットの中身がテレビで披露されると、加速度つけて猛烈な勢いで、情報は広がる。千里を走るのだ。受け止め方は、いろいろだが、バクダン発表直後は、引き際の潔い美学に共感するものが多かった。
もっとやれるのに惜しいと涙ながらに引き止めたい派と、本人のクレバーな人生設計に、やつかみ半分に、ま、勝手にやればというのと、海外でもどこのチームでも監督とうまく行かず使ってもらえない、つまり居場所がないから、引退の潮時だったのだというクールな見方が、こもごもだ。
この若さで、中田ほど海外で評価された選手は、野茂、イチロー以外にはいない。アスリートとして俊敏な身体能力と強靭な肉体を、グローバルなビジネスに結び付け、成功を極めたパイオニアだ。たった十年で百億円儲けたと夕刊紙は報じている。ナイキやコカコーラなど世界ブランドがスポンサーだ。
三ヶ国語を流暢に話し、外国人とも愛想よくコミュニケートできる世界の名士だ。ニューヨークが大好きで、五層の古いビルを所有し、いまをときめく安藤忠雄に改装を依頼済みだそうだ。これ以上、何を望むことができよう。

nansai060710-3.jpg

人生は旅で、旅が人生だ。自分探しの旅に出る。と、まあ、この若さで芭蕉のように人生を述懐しても、だれからも、とやかくいわれることはない。

サッカー選手としての世界水準でのかれの真の実力は、ぼくにはわからない。最近では、ピッチでの華々しい活躍は、きいていなかった。引退もやむをえないのだろう。

だが、ナカタは、学歴も閨閥も関係なく、若くして世界市場に自分のパワーをせりにかけた。大多数のJリーガーたちは、真夏のセミのようにまもなく選手寿命が終わり、食べてゆくための仕事探しにせまられている。自分探しどころではないだろう。思えば、29歳のぼくもそうだった。

ナカタは、「格差社会」をものともせず、なみのJリーガーと違う、めぐまれた自分の資質をフルに生かして賭けに勝った英雄だ。文句あるかというところだ。
将来は、今回ぺちゃんこになった日本の代表チームに何らかの貢献をしてほしいものだ。が、それはカラスの勝手だろう。

一方、野球界では、あの野茂が、全盛期を過ぎて、腕にメスを入れ、マイナーに落とされても、大リーグになお食い下がっている姿をみて、頭の下がる思いだ。プロ野球に賭けたい若者たちにチャンスを与える「野茂チーム」は、維持できるのだろうか。いまのところ、ナカタのように支援してくれる全国スポンサーもいないようだし。残念だが、商売がへたなのか。
人生いろいろだなあ。

投稿者 nansai : 2006年7月10日 16:40