縦書きブログ「八軒家南斉」

WEB1グランプリ 準グランプリ受賞

2006年7月13日

七月十三日(木)

「ばーさんがじーさんに作る食卓」という人気ブログをご存知だろうか。
むかしむかしではなく、平成の今、京都の郊外にすむ、外食嫌い主義で、味の素を使わないライフスタイルの老夫婦が、自分たち二人だけのためにつくった毎日の料理の克明な記録である。
06071401.jpg

高齢者むきのローカロリーで食欲をそそるレシピがならんでいる。
豆いっぱいのクスクス、アスピックゼリー、ジャガイモパスタのグラタンなどなど。今風に言えば、まさにロハスの世界だ。食材を吟味したローカロリーだが、豊かなアイデアにあふれており、見てくれを気にした、よそいきのごちそうは、一品もない。
06071402.jpg

料理の作者は、当然、ばーさん。しあわせなじーさんは、手づくりの料理をあじわう前に、デジカメで料理の写真を撮る。そして、食後、二人で感想を述べ合いながら、夫婦合作のブログを編集する日々。このブログから、高砂のオキナ、オウナのような心温まる夫婦状況がみてとれる。
06071403.jpg

毎晩仕事で帰宅の遅い高齢の連れ合いを気遣う、ばーさんの「愛」の調理が評判となり、若い女性たちのあいだでも信奉者がふえたようだ。日本中に静かなネットのうねりの輪となってひろがっている。すでにテレビでも紹介され、共感する数多くのファンが毎回コメントをにぎやかに寄せている人気ブログらしい。

じつは、このブログの隠れたブームの仕掛け人、兼カメラマン兼、作者は、意外にも、ぼくのすぐ身近にいたのだ。
若いときから長年お世話になったアートディレクター、かつ、天才イラストレーターO氏が、そのひとである。
先日、かれは、35年共同経営していた会社を後進に託し、悠々自適の生活に入るからと、突如リタイアのあいさつにみえた。帰り際に、じつは、自宅でひそかにウエブでこんな実験もやっていたと,さりげなくURLを披露された。

ブログをのぞいてみると、ああ、なんと、すばらしい食生活だろう。
ぼくの年齢になると、おなかがぽこんとタヌキのようにせりだしてくる。これは、メタ何とか症候群のうたがいがあり、家で出される料理は、引き算だ。やれ食べすぎだ。あれもだめ、これはこれで、コレストロールが多いからだめ、など、加齢とともに、飲んだり食べたりの楽しみがだんだんうすくなる。
だからこそ、このブログに記録されているように、からだにいいローカロリーの食材を吟味して、おいしく調理し、少しずつ味わって食べるようにこころがけねば。
だが、昭和ひとけたのぼくらは、戦時中の極限の飢餓状態から開放されて、いっきょに身についたのが、夜な夜なの残業くずれの外食本位、牛飲馬食の悪しき食習慣。あれはあれで、エンジョイしたなあと、懐かしがっているようでは、まだまだ反省がたりない。くわえて、出されたものはきれいに平らげてしまう、「もったいない」の美徳というよりは、意地きたなさ。ふとるはずだ。

しかしだ。ぼくらふつうのジーさんは、気をつけよう。
かりそめにもバーさんに向かって、「この理想の老夫婦のように、毎回丹精こめて作ってもらえる料理はうらやましいなあ。こんな生活もあるのだなあ」など、ため息混じりに、けん制してはいけない。イヤミととられるおそれがある。
とうぜん、ばーさん側にも、反論があるだろう。テポドン発射のように、やぶへびである。わかっとるやろなあ。老婆心までに。
(冒頭のクマさん夫婦のイメージは、プロイラストレータの作者ご自身をさしおいて、絶好の画題にシロウトのぼくが勝手に挑戦したものだ。このくそ蒸し暑いのに、むくつけき毛皮を着せたりして、すみません。森の中の老夫婦の和やかなスナップをねらったつもりだが、古希を過ぎ、老いてますます爽やかなお二人のイメージこわしてしまったかも。)

投稿者 nansai : 2006年7月13日 13:30