縦書きブログ「八軒家南斉」

WEB1グランプリ 準グランプリ受賞

2006年8月16日

八月十三日(日)

上海便り」。(佐藤惣之助詞)。七十年近く前、こんな勇ましくない、のんきな軍歌?が、はやっていた。

拝啓 ごぶさたしましたが、
ぼくもますますげんきです。
上陸以来きょうまでの
鉄のかぶとの弾のあと
じまんじゃないが、みせたいね。

nansai060816-1.jpg

いまでもネットで探せば、軽いメロディーがパソコンのスピーカから流れ出てくる。この歌での「上陸」とは、昭和十二年中国上海への上陸作戦のことだ。
この悲壮感のまったくない気楽なメロディーを、幼いぼくは好きで、いつの間にか覚えていた。

今夜、NHKの放映した一時間番組NHKスペシアル「日中戦争」は、同時代にほとんどシンクロして生きたぼくにして、ショックだった。なぜ戦争は拡大したか―は、日本国民必見の重いドキュメントだ。
歌の文句とちがい、上海上陸は、鼻歌まじりの気楽な戦いではなかった。金沢の第一師団は、頑強な抵抗に会い、上陸以来半分の死傷者を出した。軍部が信頼し同盟国なはずのドイツが中国に軍事顧問を派遣し、上海周辺の陣地構築を指導していた。最新鋭の武器を蒋介石軍に売り巨利をはくしていたという。ヒットラーの二枚舌だ。意外だった。

八年間の戦争で、いったい何が起きたのか。なぜ無謀な太平洋戦争に突入して、どうして310万の日本人の命を失ったのか。中国人の犠牲者は一千万人とも言われていると、NHKスペシャルは、淡々と述べている。このような重い歴史の現実をぼくたちは知らされていなかったし、戦後は、戦時中のつらい史実を、振り返ろう、とも、後世に伝えようともしなかった。きびしい歴史に向き合おうとしていなかったのだ。
一時間のこのドキュメンタリーは、あれほどまでに無謀な戦争の大きななぞを解く手がかりを与えてくれた。もちろん、その一端に過ぎないが。
南京の虐殺についても、兵士の証言と、第一師団の戦闘記録に、殲滅の命令が出て、6千6百人の銃刺殺の報告が載せられているのを報じた。
NHKは、戦後61年にして、後世に恥じない立派な仕事をしたと思う。先回のNHKスペシアル「硫黄島」も、必見だ。玉砕の美名のもとの死んでも死ねない絶望の戦いの実態を生存者の涙の証言により、暴いてあますところがない。

なぜ戦争の拡大が抑えられなかったか。厳正な史実にもとづいて、あの無謀かつ無責任な戦争がなぜ起きたか検証せねばならない。戦後60年過ぎて、各国の公文書館で公開され閲覧を許され始めた。これを機に、史実を直視し、うやむやにせず、歴史にまなぼう。今後の日本の国のすすみかたに反映させねば、懲りずにまた繰り消しかねない。
歴史の法則に学ぶこと、これが真の意味での「悠久の大儀」であろう。過ちを繰り返さないために、こころして学ばなければ、心ならずも国のために倒れた人たちに申し訳ない。

宝塚線の痛ましい事故を引き起こしたJR西日本の管理責任が問われている。犠牲者107人だった。
300万人の戦争犠牲者を出した戦争責任は、あえて問われずにいるが、指導者たちの「業務上過失致死」で、すませてよいわけがない。国民に対する戦争責任に、A級も東京裁判も、関係ないと思う。

読売新聞が、「昭和戦争」を検証しようとしている。タイムリーないい試みだ。
ぼくは、この戦争を昭和6年からの満州事変、盧溝橋に端を発する「支那事変」と、米英に宣戦布告した戦いの質の違いを認識すべきだと思う。なによりも、いったい何が起きたのか、史実に向かい合い、知ることだ。知ることにしり込みしてはいけないと思う。解釈は、後世の歴史家にゆだねるとしても。

靖国問題で、テレビは、プロレスのバトルロワイヤル状態になった。立場をことにする敵味方討論では、双方が突如激昂したりして、場外乱闘となり正常な議論ができない。日本人同士も、歴史について、あまりに情報不足で判断の資料を共有していないから、話し合いで分かり合える域を超えているように思える。


投稿者 nansai : 2006年8月16日 17:54