縦書きブログ「八軒家南斉」

WEB1グランプリ 準グランプリ受賞

2006年12月25日

十二月二十五日(月)

クリスマスプレゼント

なんでもそろう豊かな時代である。ABCだったか、テレビで、アメリカの若い男女が、クリスマスの贈り物に貰って、困るものはなにか、とインタビューされていた。思い当たる節があるらしい。
ある、ある。趣味に合わないものをプレゼントされると腹がたつらしい。男性は、ケータイはいらないと答えていた。

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かれこれ七十年前のあるクリスマスの朝、幼なかったぼくの枕元に、たたまれた紙風船がおいてあった。なんだ、風船か、とがっかりした。
サンタクロースのことは童話や絵本では、知っていたが、プレゼントをたたみの上においていったとは夢がなさすぎた。
べつにうれしくもなく、祖母のこころ使いとすぐわかった。すぐふくらましたかも、覚えていない

事情があって、そのころ、幼稚園に上がる前からぼくは田舎町で明治生まれの祖父母と三人で暮らしていた。
幼く頼りなげな孫に、なにか、クリスマスの真似ごとをしてやらなくてはと、考えあぐねて、紙風船のセットを枕元に置いたのだろう。寝小便のやまない孫の前途を思い暗然としていたであろう老いた祖母の年齢をはるかに越えたいま、心情が痛いほどわかる。
わがままで不肖の孫には、ありがとうとか、これがほしかったんだとか、祖母がよろこぶような感謝の言葉をのべるような知恵は、思い浮かばなかった。

テレビはおろかラジオもなく、ジングルベルもクリスマスツリーも、絵本いがいには、聞いたことも見たこともなかった時代のことだ。「三丁目の夕日」よりも、はるかに遠くかすんだ戦前の昭和があった。

投稿者 nansai : 2006年12月25日 18:10