縦書きブログ「八軒家南斉」

WEB1グランプリ 準グランプリ受賞

2007年4月 6日

四月六日(金)

隣りの北大江公園で、午後、ハトとホームレスの猫が満開のさくらの花の下で、なにやらひそひそ、しゃべっているのをきいた。

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腹をすかせて、ベンチの下にうずくまっている黒猫が、うらやましそうに。
「この公園の桜も、ようやく満開やな。
川向こうの造幣局の通り抜けも始ったで。あっちは、ぞろぞろ、ものすごい人出や。えらい違いや。
夜店も出て、満員の京阪電車は、うはうはらしい。」

「そういえば、ここには、だれも花見に来よらんなあ。がらんとして、もったいないわ。
ことしは、冷えるからやろか。
公園も整備されて、花見にはもってこいなのに。桜の木も十五本以上はあるで。
酒盛りが始ると、おこぼれがもらえるのに。おなかすいたなあ。」
と、鳥目のハトだから、夜の宴会はつきあえない。

「大阪の町は、みなが散歩するようにならんと、元気がでんと、建築家の安藤さんもいうてはった。
で、これから、みなが散歩できるように、大川一帯に桜を植えて、「平成の通り抜け」にしたろ、という構想らしい。雄大やないか、アイデアが。」
「ところで、この界隈は、どうなる?
蚊帳の外では、つまらんなあ。このさびしい公園に人が集まるにはどうしたらええやろか。
わしらも、かわいがられて、えさをもらいたいし。」と、ハトも空腹そうだ。

「あんたら、ハトはあかんわ。まるまるふとっているし、それにしては、フンのしまつとか、マナーが悪すぎるデ。」と、自分の評判は棚に上げてホームレス猫。
負けじと、ハトも、いいかえす。
「ネコは子をぎょうさん産むから、きらわれるんや。人間の世界のように、ねこにも「赤ちゃんポスト」をつくってくれたらええのにな。」

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花見の季節はすぐ終わる。
だが、いよいよ、日本人にとって勝手の違う「少子高齢化」時代にはいる。どうなるだろう。想像もつかない。この公園の風景も変わるにちがいない。お年寄りで、いっぱいになるかも。
近所の都心のマンションに、高齢者が続々とかえってくる。そのうち人口三人に一人は高齢者だ。

人口減少社会の設計」(中公新書松谷明彦、藤正巌著)によれば、長い時間をかけて高齢者社会に移行したイギリスの都市が参考になるという。

どんな町でも日中に人でにぎわっている。その半分が高齢者だそうだ。町の真ん中には歩行者天国がある。高齢者が安心して歩き回れるよう、駐車場があちこちにもうけられている。クルマが遠慮するシステムがつくられているらしい。ぼくらは、人間が安心して歩けるはずの歩道を、ベルも鳴らさずスピードを上げて走る自転車におびえているというのに。
そして、多くのベンチが町のあちこちにある。高齢者が、長時間、町の中ですごし、知り合いに会い、落ち着いて話せる場所が必要だ。

どっこいしょと腰をおろせるベンチが、これからのまちづくりの主役になる。
テレビで紹介されていたが、あちらの公園では、ベンチを寄付した人の銘版がはりつけてあった。
市民が亡くなった家族の思い出の記念とかで、ベンチを寄贈するらしい。記念植樹みたいな感覚だろう。

先日NHKの再放送で「小さな旅、明日も笑顔で」をみていたら、この国での高齢者社会の未来像は、巣鴨の高岩寺の境内にあった。

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「ばあちゃんの原宿」で、つとに有名なとげ抜き地蔵商店街だ。境内には、もちろんベンチがびっしり十重二十重に準備されて並べられている。
話し相手をもとめて遠くからやってくるお年よりの常連も多いからだ。
自分で撮った猫の写真を見せ合ったり、コミュニケーション用と称しておかきや飴玉もめいめい用意して。おしゃべりをたのしむのだ。
カラオケ喫茶「昔の唄の店」も、客層は90歳から60歳と幅が広い。食べ物の持ち込みは自由。みな、出番の合間に、持参した手料理を、分け合っている。
常設の花見のようなものか。
65歳の易者さんが、しばらく顔を見せない人へのことづけをあずかったり、ここでは、高齢者が、交流しやすい街づくりになっている。

こんな風に、日本でも、欧米の高齢者コミュニティとは一味違った「寄り合い」の場が多彩にくりひろげられるだろう。それに合わせた町づくりが、そろそろのぞまれるのだが。

ここ八軒家船着場の界隈は、京と大阪を結ぶ交通の要衝として栄えた。
通り抜けの始る以前の夜桜の季節、三十石舟が大川を漕ぎ渡るの図。時代考証は、ちゃらんぽらん、いい加減だが、オリジナル。天満橋過ぎて天満青物市場辺りの風景のつもり。

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投稿者 nansai : 2007年4月 6日 14:02