縦書きブログ「八軒家南斉」

WEB1グランプリ 準グランプリ受賞

2007年4月16日

四月十六日(月)

さくらさくら

さまざまのこと
思い出す桜かな

これは、春の園遊会で、安倍首相が唐突に引用した芭蕉の句だ。

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老いた芭蕉が、故郷の伊賀上野で、思いがけなく先君の遺児から花見の宴に招かれたときに、感慨をこめて詠んだ句らしい。
その22年前、仕えていた先君が25歳で急逝した。近習だった芭蕉は、あまりのことに驚き世をはかなんで出奔したのだ。
首相には、郵政脱藩組を意識してとか、の思惑はなさそうだが。

しきしまの大和心をひと問わば
朝日に匂う山桜花

不幸にも、桜の花は、先の戦争にふかく関わりつづけられた。貴様と俺とは同期の桜。ぱっと咲くよりは、潔い散りかたが、武士のかがみと尊ばれたのだ。

万だの桜か 襟の色
花は吉野に 嵐ふく
大和男子と 生まれなば
散兵線の 花と散れ

悠久の大義に生きよ、戦場で命を惜しむな、いさぎよく散る桜をみよ、というわけだ。いつ頃からこういう美意識が生まれたのか。

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とにかく日本人は散るさくらが好きだった。
「散るさくら 残るさくらも 散るさくら」とか「久方の光のどけき春の日に しずごころなく花の散るらん」
などが、標準メニューだ。
つぎは、ぼくの好きなひねくれ一茶の句。

ただたのめ
はなは はらはら
あのとおり

この世に、ただ頼み参らすのは、観音さんしかないと、一茶はいうのだ。

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投稿者 nansai : 2007年4月16日 14:29