縦書きブログ「八軒家南斉」

WEB1グランプリ 準グランプリ受賞

2007年8月24日

八月二十四日(金)

八月のあの日の空の青さかな

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62年前、国敗れた日の空の青さを思い出す。
学徒動員されて、日本海海岸の陣地の穴掘りをしていた。下痢してやせこけているのに、空腹だった中学生。あの日の昼のおかずは、たしかかぼちゃだったか。

そして、お盆明け。62年後のきょうの昼飯は、近所のイタめしランチ。白い皿にピザなどこぎれいに盛られた前菜。あつあつの海の幸スパゲッティ。エスプレッソ。これで千円。「ありがとうございます」の声に送られて、店の外の空が、青くまぶしい。
お礼を言うのはこっちなのに。いつも空腹で、食べられることが何よりもありがたかった時代を、忘れている。腹いっぱいたべられる、それがどんなに満足なしあわせだったことだったか。

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戦争末期、戦おうにも食べるものがなく死んでいった兵士たち。太平洋戦争に倒れた兵士の七割が、悲惨にも餓死といわれている。精神論だけの補給なき無謀な戦いだった。
昨夜、NHKハイビジョンのシリーズ証言記録「兵士たちの戦争」をみた。NHK全国の放送局で収集し記録したドキュメンタリー番組だ。
証言者は、ビルマ、フィルピン、中支の戦線で戦った元兵士たち。みな八十歳を越えている。重い口を開いて、若いアナウンサーの無神経とも思われる問いかけに、答える。
高齢の証言者たちの、おそらく生涯最初で最後と思われる証言の内容は、重く暗い。とつとつと、語られる。無表情に。あるときは、涙を浮かべ、あるときは、むかしの日本人特有のうすら笑いを浮かべて、さりげなく。

軍首脳のエリート参謀が立案した大作戦が、いかに思いつきで理不尽であったか。でも命令は絶対だった。辛くも生き残った生存者たちの証言は、申し訳なくて、とてもまともには見ていられない。

援軍も補給もない。密林のなか、空爆にさらされながら、武器も食料もない作戦だった。
打通作戦2000キロの長い行軍では、戦う前に、歩き続けるつらさに耐えかねて自殺する兵士が続出した。

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はじめから食料は現地調達と決められていたという。つまり住民からの略奪だ。食うものがないから仕方がなかった、と自嘲気味に語る最強軍団の兵士たち。

フィリピンでは、敗走して逃げ込んだ山の中には、食べるものがない。泥水をすすり、草を食った。「電気いも」は食うと内臓が腫れ、死に至る。倒れた兵士の顔の両頬がえぐられてないのを見たという元兵士の証言。きっと空腹に耐えかねて、人肉を煮て食ったのだろうと、ひとごとのようにいう。極限になれば人間はなんでもするとも。

いま、安倍首相をはじめ戦争を知らないひとが大半だ。この悲痛なドキュメンタリー「シリーズ証言記録」を、目をそむけずにみてほしい。冷厳な歴史の事実を見つめるのに、史観の自虐も自愛もないように思われる。
60年以上も、悲惨な歴史の生き証人たちは口を閉ざしてきた。かれらの最後の証言に耳を傾けるのが、ぼくたちのつとめではないか。
今のご時勢とあって、NHKもあえて目立たない時間帯を選んで放映しているように見受けられる。安倍内閣を取り巻く自民党の有志は、教科書を議論するまえに、史実を確かめてほしいと思う。

絶対の命令のもとに、「皇軍」がどう戦ったか。戦線でなにがあったか。なぜ300万人が命を落とさねばならなかったか。そして、それに倍するアジア各国の人たちが巻き込まれて、身の上になにが起きたか。
史実だけが物語るのだ。
あまりにも多い証拠、証言を検証し、事実を認めることから、すべてが始まるのではないか。

今回NHKから放映された次の番組からうかがえる戦没兵士の数は、そして、戦いに巻き込まれ戦没した市民、農民の数は、いったいどのくらいになるのだろうか。
いま、ちまたでは、死者に勇気づけられる「千の風に乗って」の曲が、静かに大流行しているといわれる。百万枚を突破したとか。

私のお墓の前で泣かないでください
そこに私はいません 眠ってなんかいません
千の風になってあの大きな空を吹き渡っています

かれらひとりひとりが「千の風」になる。ならば、集まってとんでもない、怒りのパワーの台風エネルギーになるはずだ。                   
                      合掌

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証言記録 マニラ市街戦

第一回 西部ニューギニア 死の転進
佐倉歩兵221連隊
第二回 北部ビルマ最強部隊を苦しめた密林戦
久留米第18師団
第四回 退却支援 崩壊したビルマ戦線
敦賀歩兵119連隊
第五回 大陸打通作戦 苦しみの行軍2000キロ静岡歩兵34連隊
第六回 陸の特攻フィリピン最後の攻防 
岡山歩兵10連隊
第七回 ソ連国境知られなかった終戦
青森 野砲兵107連隊

投稿者 nansai : 2007年8月24日 17:56