縦書きブログ「八軒家南斉」

WEB1グランプリ 準グランプリ受賞

2009年8月20日

八月二十日

NHK「戦争証言プロジェクト」は、あすの日本のための追悼施設だ。

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NHKがインターネット上で「戦争証言プロジェクト」を進めている。これは、300万人の尊い命を失った悲劇の負け戦の記録である。デジタルでこそ記録しえた。先の大戦終結から64年、これは偏狭なナショナリズムにあおられることなく、冷厳な歴史を直視し、未来を考えるために、後世に残す貴重な資料となった。
あれほどの惨憺たる敗北を喫した敗軍が正しくリアルに歴史を語ることは少なかった。11年に完成するこのこころみは、後世に伝える情報の金字塔である。
ここに、日本で初めて、いや、世界で初めてではないか、テレビとインターネットが初めて大規模に融合した戦史が完成しつつある。

まず、サーチエンジンに「戦争証言」と打ち込んでみてほしい。
日本人が知らされていなかった、知ろうとしなかった太平洋戦争の生々しい実録が、アジア太平洋各地で参戦し、かろうじて生き延びてきた人の証言により浮かび上がってくる。
戦場は地獄だったと回想する証言者たちは、90歳前後、ようやく重い口を開いた。

何の大義もなく成算もなく突入した大戦で310万人の同胞が命を落とした。巻き込まれたアジアの人たちは、2千万人とも。
200万人もの日本軍兵士が戦場に送られた。兵士の70%が、補給を断たれ、弾を撃つことなく、餓死したといわれる。

NHKは、これまで、営々としてあの悲惨な戦争の実相を、映像と敵味方双方の生存者への取材を通じて数々のドキュメンタリーを制作、放映してきた。
ネット編集が綿密ていねいだから、NHKスぺシャルなど長時間ドキュメンタリーも丸ごと収録され、必要な部分だけ抜き見することができるのはありがたい。

過去放映されたドキュメント「太平洋戦争」と、シリーズ証言記録「兵士と戦争」をネットに完全収録した。これに地図、年表、証言者の索引から、レイテ戦から沖縄上陸など、個別のストーリーへリンクされる構成だ。
いま、若い人も政治家もあまりに歴史認識が足りないといわれる。
近現代史は、授業で教えない、入学試験に出ない。でも、このような史実を、アーカイブで動画で見ることができる。いつでも、どこでもだ。

ネットとテレビのクロスメディア編集は、あらゆる情報を百科事典のように、整然と整理できる。伝えやすく教えやすい。教科書を授業でどう使うかに教育革命をもたらすだろう。BBCなど他国に先を越されてきたが、NHKの今回の試みは、21世紀のデジタル情報伝達に、出版とは別の新しい可能性を投げかけている。
日本の教育は変わるかもしれない。
この方向に向かう投資こそ、国民から白い目で見られているハコものでない、次の世代の人材を育てる公共事業ではないか。

投稿者 nansai : 2009年8月20日 15:54