縦書きブログ「八軒家南斉」

WEB1グランプリ 準グランプリ受賞

2010年5月 6日

四月三十日 年齢をとると、みなころぶのだ。

ころぶのは、そこつなぼくだけではない。高名な作家で医学博士の渡辺淳一氏も、ころんでいた。

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『いやあ、驚きました。あきれました。そして失望しました。
昨夜、思いもしないことから、路上に転倒。
そのときの詳しい様子は、いまだに自分でもよくわからないのだが」

こんな書き出しで、週刊新潮連載のエッセイ『あとの祭り』「倒れてわかったこと。」に、作家の渡辺淳一氏が、ご自身の転倒経験を述べている。しかも、ごていねいに二週にわたって。

ある夜タクシーをさがしていて、先生は、道路の向こう側にわたろうとして、思い切って柵を越える際に、左足はまたげたが、右足がひっかかったらしい。

さすがはプロの作家、数週間前に、まったく同じような体験をしたぼくは、文筆で立つほどのひとの見事な描写力に感心しきりである。

先生は、柵に右足が引っ掛かって路上に左肩から落ちた。左手首、大腿部に激痛が走ったという。しばらくじっとしていたが、渡辺氏は、もともと整形外科医だから、自己診断して痛むがたいしたことはないと、帰ってシップをはって応急処置をした。医者にはいかなかった。

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渡辺氏は、軽妙なタッチで、事故?の一部始終を描写しつつ、
『それにしても、何故、こんなことになったのか。』とショックをかくせないもよう。
「これくらいの柵は越せると思い、少し脚を上げればいいだけだと軽く見た。ところが肝心の脚はあがっていなかった。いや、あげられなかったのである。」
作家であり医学博士である渡辺氏の結論としては、
『自分が年齢をとっている、と思っている以上に、体は年齢をとっているのである。』

渡辺淳一氏は、ぼくとほぼ同年輩だが、転倒歴では、ぼくのほうが先輩だ。じまんにはならぬが、昨年は三回もこけた。原因は、先生ご自身のお見立て通りだ。ごもっとも。

先生は、週刊新潮の次の週のエッセイ「かなりよくなりました」で、イラストの唐仁原画伯の描写が、さすがはプロだ、真にせまっていると絶賛している。
「私が歩道と車道を境している柵を越えようとして、倒れかけた格好が、まさしくぴったり、まるで隠れて見ていたように、見事に描かれている。」
絵をみているうちに、転んだ時の痛みが甦ってきたのだから驚いたそうだ。

渡辺先生は、元整形外科のお医者さんだったので、耳の痛いご託宣をずばり。
「今回のわたし程度の怪我では、病院にいかないこと。」忙しい医師はうんざりするだけ。シップと痛み止めをだすだけだから、行っても行かなくても同じだそうな。
ころんで側頭部を打ちあわてたぼくは、CTを撮ってもらったのだ。

投稿者 nansai : 14:28