縦書きブログ「八軒家南斉」

WEB1グランプリ 準グランプリ受賞

2011年10月28日

十月二十八日
日本の農業をどうするのだ、と聞かれても

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TPPに参加するかしないかで、尊農攘夷、日本中が二つにわかれてもめている、とニュースは伝える。
ふつうのひと、つまり消費者かつ有権者には、ことのしだいが、よくわからない。

「参加すれば日本農業は壊滅する」と、全農は反対し、人や署名を集めて、気勢をあげる。テレビに映るのは、農家代表のシュプレヒコールの場面ばかり。
鉢巻き締めて、全農の指導者は叫ぶ。政府は急いで日本農業の行く末の方針をださねば、TPP参加絶対反対。といわれても、国民は、消費者の立場から、先送りと失敗を重ねてきた農政の迷走振りをよくわかっていなかった。落選がこわい政党は、目先の農村票が、なによりたいせつだ。数はチカラだから。
行く末を見据えた国益としての農業対策は、もしあるとしても、口がさけても約束できなかったと思う。

都市に暮らす消費者は、長年、自分たちの税金を湯水のように使ったあげく、いまの耕作放棄地と農業の担い手が跡継ぎがそだたぬままに老齢化した結果について、無関心だった。長年の農業振興という名の公共工事の無駄遣いを認識していなかった。

もちろん、これから企業の力など導入して、新しい試みでカイゼンすれば、局面が開けることを期待したい。しかし、いまのままでは、先はみえない。

過去をふりかえり、さきざきを考えるタイムマシーンのコックピットで、スーパーコンピューターのデータ(いま出ている新書版の解説書4,5冊分でオーケーだ)から読み取ると、どうなる?
しろうとのぼくに見えるのは、つぎのような景色だ。
日本の農地は、いくら税金を投入しても、耕作不能地がますますふえる。農地を耕す人がいよいよ老齢化を超えて、ついに不在となる。職業として、水田農業をこれからの若者は、認めなくなる。家族が養えないからだ。
とすると、ゆくゆくは、日本の農家は、耕作放棄か、(いまでも農協や工場で収入を得ている兼業農民だ)
嫁さんだけでなく他国から移民に耕作をゆだねるかだ。(これも選択肢のひとつだ)

世界人口が80億をこえ、このままでは食料不足は、目に見えている。

日本のように国土がせまく、自給率に懸念をいだくよその国は、どうしているのだろう。
自国の農業の限界をわきまえて、国境を越えたアイデアで行動しているらしい。
たとえば、お隣の韓国。
「穀物調達、官民で海外開拓」と日経新聞で報道されている。食料不足による価格の高騰にそなえて安定ルートをつくっておくねらいだ。政府と総合商社が、官民の資金を活用して、共同事業体を組み、海外の資産拠点や物流網の構築に乗り出すとある。まず、共同出資会社を米国にたちあげ、小麦やとうもろこしや大豆などの穀物を輸入する。ロシアやブラジル、ウクライナ、東南アジアに段階的に拠点を作る計画だ。
次はデンマーク。
デンマークの養豚業者は、国内での事業拡張にみきりをつけ、とくに東ヨーロッパに広大な土地を確保し、大規模養豚経営のための投資を2004年からはじめている。
「デンマーク、ノルウェー、ロシア、バルチックボーグ投資会社という3つの国名を織り込んだ会社が、バルト海岸のカリングラードで2500ヘクタールの土地でプロジェクトを立ち上げているという。(ケンジ ステファン スズキ氏の著書から)

いづれにしても、どこの国も官民の大資本が、国境を越えて、このような計画をうごかすのだ。
これから人口が減り、狭い国土に農耕適地のすくないわが国は、国境をこえた柔軟な発想が、どうしても必要になる。国も、生き残りをかけている企業と同じように、マーケティングが必要だ。

日本も自給率を高めるには、いまの円高を活用して、世界と農業で手がつなげるのではないか。

投稿者 nansai : 16:26

2011年10月17日

十月十七日 ピリオドの月。トラは死してTシャツに。

未曾有のこの国難にプロ野球なんか、という自粛気分の開幕だった。


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ことしも、阪神は、阪神らしく、戦ったと思う。そう、阪神らしく。そして、Bクラスに落ち着いた。
クライマックスシリーズに参加できなかったとして、監督は「辞任」という名の解任。

ひともうらやむ補強をしながら、土壇場のここぞというところで、音量だけは世界一の大声援をバックに、踏ん張りきれなかった。

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あまりにも、いいところで、打てな過ぎた。あれれ連敗という毎度おなじみの歯がゆいパターンも、阪神らしい。
力のある選手たちも大観衆の前でいっしょうけんめいプレーしたように見えたが、ことしもへとへとになった終盤で息切れし、結果が出せなかった。優勝争いから脱落してからは客足は一気に減少したと報じられた。
阪神ファンたるもの、いつも最悪のシミュレーションを覚悟し、ま、楽しまにゃ。(ときに、あまりに好調で勝ち進むと酔いしれながらも、待てよ、こんないいことが続くわけないと、そわそわ落ち着かないのだ。)

取りこぼしが続き、天王山の大阪ドームで空席が目だったので、選手もぎょっとしたらしい。今季の観客動員は、成績とは違い12球団トップだが、3季ぶりに300万人の大台を割るらしい。

ファンの怒号で、球団もあわてたのだろう。目の肥えたトラキチからみれば、なにしとるんじゃ、という采配で、動員数が落ちたとなれば、ほってはおけない。クライマックスに出場できなかったら、監督コーチそろって切腹の処分を発表。

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真弓監督も、二年前、突然指名されて、とまどいながら監督を引き受けた。
ハンサムで名選手ではあったが、監督のリーダーシップ、技量、経験を見込まれたわけではなかったから、白羽の矢を立てたほうに大きな責任がある。契約は、あと一年のはず。
生え抜きの阪神出身でなかったから、古参選手への遠慮もあり、やりにくそうだった。
古参に甘く若手に厳しいのが、阪神の伝統で、だから出場の機会の少ない若手が育たないと、スポーツ紙はきびしい。

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新監督選びは、なかなか難しい仕事だ。
まず、勝つ能力のマネージメントが必要、つまり勝てる人材への投資だが、カンタンなはずがない。ともすれば、ひいきの引き倒しになりがちの人気と現実の実力を天秤にかけ、新陳代謝をはかる、これがむつかしい。
ファンは勝手な注文をつける。毎試合、自分のひいき選手(実力は伴わなくても)にでてほしい、いいプレーを見たい、勝ってほしいのだ。

球団として、もっと大事なのは、興行成績を維持することだろう。
なにしろ日本一のドル箱人気球団の利益計画だ。タイガースファンという、大球場を満員にしてくれる大観客を決して減らしてはならない。阪神電車と甲子園の運命がかかっている。
むかしある代表が、「優勝はするなよ。二位でいい。」といったとか。優勝すると、何かと物入りだから。経営者としては、これはおそらく本音だろう。ファンとしては、優勝して溜飲をさげたいのに。

中日は、日本一の八年目の優勝監督と契約を更改せず、ここらで新しい風を入れたい意向らしい。人気回復を考えたか、ドラゴンズはえ抜きの名選手、71歳の元監督が起用された。
野球は興行だ。勝ち続けても、球場に来る観客が増えるとはかぎらないと割り切ったのか。胸のうちはよくわからない。監督人事は、大リーグではどうなのだろう?毎年勝ち続ければ、首にはならないのでないか。

阪神球団も、つぎの監督候補は、タイガース生え抜きの中からと選ぶつもりという。野村、星野監督招聘の前は、身内から選んで、なぜか過去さんざん痛い目にあってきた。

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日本シリーズは、このままゆくと、不人気シリーズになるかもしれない。関西の スポーツ新聞の一面は、トラの次期監督を面白おかしく書きたてるだろう。内部昇格なら、和田コーチが有力らしい。ぼく個人は、プレーボーイ誌のあげる元ヤクルトの古田が適任と思うが、むりやろなあ。

阪神の人気低迷は、球界にくらい影を落とす。某紙によれば、巨人のナベツネ御大は、タイガースは落合監督をとれ、とけしかけているという。阪神巨人が盛り上がらなければ、セ・リーグの明日は望めないという読みからだ。

ともあれ、新監督の下、タイガースに鬼も笑う来年を期待しよう。再出発のはなむけに、Tシャツ用のデザインを、ぼくのトラ・アーカイブからひっぱりだした。「カーネルサンダースの呪い」祟り封じも。


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投稿者 nansai : 15:13

2011年10月13日

十月十三日 
56歳と100歳。偉大な二人の人生に思う。

偉大な革新者スティーブ ジョブズの恩恵を、ぼくも、毎日受けていたのに気付かなかった。ぼくの絵は、すべてマウスを動かして描いているのに。

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このマウスは、天才スティーブ ジョブズがはじめて製品化した。かれは79年にゼロックス研究所を訪れたときに、はじめてマウスを見た。そしてその瞬間このちいさな機器がコンピューターの世界を一変させる可能性があるとみてとって、以降、精力的に製品化を推し進めたといわれている。
うかつにも、ぼくはマウスを世に送りだしたのがジョブズとは知らなかった。


アップルのホームページを開くと、創業者スティーブ ジョブズの遺影が、射すくめるような眼光でこちらを見つめている。
56歳の若さでスティーブ ジョブズがなくなった。
早すぎる死を惜しまない人はいない。ぼくのようなマック音痴にも損失の甚大さはわかる。
「未来を、ありがとう」ニューズウイーク誌は、巻頭でカレジの落ちこぼれが,我々を未来にみちびいてくれたと感謝している。

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20歳で自宅のガレージでアップル社を起こし、ついには異なる五つの産業に大きな影響を与えたといわれる波乱の生涯だった。

有名な「ステイ ハングリー ステイ フーリッシュ」(いつも貪欲であれ、つねに謙虚であれ)でしめくくったスタンフォード大学の6年前の卒業式のスピーチがユーチューブで、いまも流れている。字幕付きだ。
きょうで命が果てると思えば、きみは、なにをするか。
いったん不治と宣告された病の手術が成功して、卒業式に招かれた。自分の思うままに生きよと、シニカルなはなむけのスピーチに、こう述べて、若い聴衆の感動をよんだ。

人生にとって教育とはなにか、学歴とはなにか、を考えさせられるかれの一生と業績だった。

学費が高すぎるといって 大学もほとんど行かず、ビジネススクールにも通っていないかれは、あらゆる既成概念を無視した自由な発想で、アイフォン、アイパッドなど、数々の革命的商品を市場に問うた。フロッピーディスクもいつの間にか姿を消してしまった。
かれは、製品のデザインで、ふつうのひとびとがバカチョンで使えるよう心を配ったといわれる。使いづらい、むだなボタンを極力はぶくように現場に要望したとも。
日本でも、パソコンが苦手だった高齢者たちが、スマートフォンに興味をいだくようになり、山村の自治体でも、緊急情報とか巡回バスの時刻表など発信し、みな簡単に使いこなしている様子がテレビで報道されていた。

昨夜は、NHKスペシヤル、「日野原 重明 100歳。命のメッセージ」が放送された。
現役医師として百歳のいまも、終末医療に関わり、緩和ケア病棟で患者たちに元気を与えつづけている医師に一年間密着取した映像が放送された。
百歳の医師は、時代を駆け抜けてあわただしく去ったジョブズ氏の二倍近い人生を生きて、なお末期の患者たちひとりひとりにしづかに生きる喜びを伝えている。そのすがたに、深い感銘を受けた。その使命感はどこからくるのか、特集は教えてくれる。

ジョブズ氏の業績は、市場に流れ込むアップル製品とおびただしい量の情報が、ネットで世界に伝えられるだろう。
いったんは、病のために絶望の淵に追いやられたが、手術に成功したジョブズ氏は10年足らずの残りの人生を燃焼しつくして、アイフォンなどの製品を世に送り出した。世界が、その恩恵に浴している。

一方、文化勲章など数々の名声はかくれもない日野原医師だが、病室で末期の患者ひとりひとりのいのちに最後までやさしく向き合う、百歳の日野原医師のすがたは、テレビ局の密着取材でしか、世間に伝わることはないだろう。
しかし、こうした番組を通して、日野原医師の「医は仁術」の考え方が、ひとりでも多くの次世代の若い医師たちに伝わることを祈りたいものだ。いまの底知れぬ不安な時代に、人心はあまりにも荒廃しているから。
残念ながら、日野原先生の温顔は、ぼくのマウス技では到底描けなかった。

ジョブズは、死期をさとっても、間際まで、自分を信じて、つぎの新製品の指示を出していたに違いない。
日野原医師は、末期がんで、自分を見失いかけている患者たちに元気をあたえる看取りをつづけている。

激しい56歳と穏やかな100歳。それぞれの死への向き合い方は、大事な何かを教えてくれる。

投稿者 nansai : 12:58