縦書きブログ「八軒家南斉」

WEB1グランプリ 準グランプリ受賞

2012年1月20日

一月二十日「いまあなたは幸せですか?」
どう答えたものか。

ここ大阪市郊外では、ことしも平穏な正月を迎えた。冬風の吹きすさぶガレキの被災地には申し訳ないほどの平凡な新年がめぐってきた。
昨春からにわかに国内外に充満する不安、不穏な重苦しい空気を、連日伝える新聞やテレビの情報にさらされなければ。

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「いま、あなたは幸せですか?」
こう問いかけたのが、キオスクで買った週刊朝日新春号だ。大きなお世話だが、幸せ感は、ひとそれぞれやで、満足するかしないか、心の持ちようや、などと相田みつおのように言い出すと、こころにおさまりはついても、議論に収拾がつかなくなる。
年賀や初詣では、底抜けの「ハッピーニューイヤー」というよりは、つつましく家内安全、無病息災、お互いの無事を願いあうのがつねである。

高齢になると、ひたすら、自分の健康だけを願うよう

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になる、いけないことだろうか、と、病気で倒れ奇跡的に復活して勇退したテレビの司会者が、新年のコラムに正直に書いていた。同感である。

そもそも、幸せとは何だろう。あらためて考えてみる。
しあわせと無事とは、いまのような八方ふさがりの、気分の滅入る乱世では、同義語なのだ。そうやなあ、とため息。

そういえば、ぼくのしあわせは、年とともにダウンサイズ化してきている。いまや、至福.とか、天にも昇る心地とはかんけいなく、ごくささいなことがうれしい。

ぼくのばあいは、失せモノ発見だ。
記憶力がトミに衰えて、しょっちゅう置き忘れする。しまい忘れもある。
めがね、本、(とくに文庫、新書などの新刊書)雑誌。パンフレット、手紙の封筒。デジタル端末、小銭入れ、定期。

ない。ないぞ。あれはどこに行った?
家の中で一日中うろうろ探し物している感じだ。
出しっぱなしにしておくと、整理整頓という家庭内暴力によって、即、片付けられてしまう。どこにしまいこんだ?と、家族を犯人あつかいにするから、うとまれてもしかたがない。

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きわめて非生産的で、くたびれる。それがふとしたところで、出てきたときは、よろこびだ。あった。ばんざい。
だいたいあるべきところにあって、気づかず、見落としているだけなのだが。
失せものとの再会は、記憶力に自信のなくなったぼくにとっては、しあわせな一瞬なのだ。またすぐべつの探し物がはじまる。

ところが、しあわせの意識が、震災で変わったという。
「今日と同じ明日」が続くことが、どんなに幸せかを、今度の震災で痛感した、と週刊朝日はいう。
あの大震災で、「当たり前の日常」が当たり前でなくなる瞬間をいやおうなく知ることになった。そうだ、今日と同じように明日が訪れる。それがどんなにしあわせなことなのか。

まさに、ちょうど始まったNHKドラマ「開拓者たち」が、70年前満州からの引揚者たちの苦難の歴史を語り始めた。「今日と同じ明日」が突然消えたのが、前の戦争だった。いつの世でも、幸せとは真逆の「不幸」とは、いかに過酷なものか。
敗戦で突然日常から引き裂かれた開拓民は、みな宮城県の農家出身だった。ソ連の攻撃にかれらは、逃げ惑い家族を失い、引揚げてまた生きようと新しい開拓地に入植、牧畜に挑戦した。

意外なことに、若者たちの幸福度は近年上昇していると、若手の学者たちを取材して、週刊朝日は指摘する。

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新進の社会学者の表した「絶望の国の幸福な若者たち」(古市憲寿著)によれば、現代の若者の生活満足度や幸福度は、ここ40年間でいちばん高いことがさまざまな調査であきらかになっている。格差社会といわれながら20代の若者の70%が現在の生活に満足していると答えている。
将来が不透明だからこそ、 いまここにいる自分たちのまわりを大事にする。そういう意味での幸せ。人間の幸福度の高低は他者との結びつきにかかわる。当たり前の日常こそ、しあわせだと感じている。
大災害をはじめて経験した若いスタッフなのだろう。みな前の戦争の悲劇を知らない人たちだ。300万人の命が理不尽に失われた。

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いったい、幸せの値打ちは、カネなどのものさしで、はかれるものなのか。
昨年、ヒマラヤ山麓のブータン王国から若い国王夫妻がおとずれ、「国民総幸福度」が話題となった。ブータンの国勢調査では、国民の97%が幸せと答えているそうだ。
この国でもDNPやGNPのような経済的な豊かさのほかに、「幸福感」があることを考えてみようということになった。政府も独自の幸福度指標を作ろうとしている。

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法政大学坂本教室は、47都道府県の幸福度を数値化した。それによると、日本一幸せなのは、福井県で、最下位は、わが大阪府であるらしい。
なんでまた大阪なんや、と府民としてはつっこみをいれ抗議したいが、平均寿命や保育所定員比率の低さ、刑法犯の多さなど40の指標で点数化したあげく、どん尻の47位だそうだ。また「府市あわせ」か。自虐ネタでも笑えない。

世界幸福度ランキングというのもある。
一位はデンマークで、日本は90位だった。レスター大学のホワイトが世界178カ国を聞き取り調査し

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たという。
びっくりするほど税金の高い北欧諸国は、国民幸福度では、かなりいいセンいっているらしい。どうして?なんでだろう?
福祉も教育も、よりよくするために税額をあげてまかなうというと、選挙に落ちるからといって、民意をみくびっているのが日本の政治。議員たちは、視察のためには、北欧をよく訪れるらしい。結論は、日本と北欧は違うよ。
デンマークは人口500万人程度、九州くらいのサイズだ。一億人以上住んでいる日本を細かく割って道州制にしたら、幸福なデンマークのような国がいくつつくれるだろうか。

投稿者 nansai : 11:02