縦書きブログ「八軒家南斉」

WEB1グランプリ 準グランプリ受賞

2012年5月25日

五月二十四日 あの夏まで無名だった飼いイヌ。
事件のたたりは不滅、というから、アメリカはおかしい。こわい。

シェイマスという名のアイリッシュセッターとかれの飼い主が引き起こした「事件」が、いまだに物議をかもしている。
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当時36歳の飼い主は、ボストンとカナダまで、ステーションワゴンに6人の家族と荷物を満載して走った。道中、シェイマスは、かごにいれられて、12時間ワゴンの屋根の上に。途中で子供たちが後部の窓に茶色い液体が垂れて流れているのに気付いて騒ぎだした。シェイマスは下痢をしていたのだ。飼い主は、給油所に立ち寄り、イヌにホースの水をぶっかけ汚れを洗い流し、そのまま、なにごともなかったようにハイウエイを走り続けた。この事件?は、1980年の夏、かれこれ30年前の話だ。主人公シェイマスはとっくに亡くなっている。
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ふつうの家族なら、新聞にのるような事件?ではない
シェイマスの飼い主は、なんと若かりし日のミット・ロムニーだった。今回の共和党の大統領候補(当確)だ。大富豪でモルモン教徒というのが、保守派でも支持のわかれる人物。

アメリカは6千万匹をほこる愛犬大国だ。愛犬家からみれば、有名人のくせに、なんちゅうことをする、許せん。この飼い主のふるまいは、残酷きわまりなく拷問そのものだというわけだ。なぜ人でなしを刑務所にいれないのだという過激な声も。

この事件?はいつあかるみにでたのか。2007年の選挙期間中にボストンの地元紙にすっぱぬかれている。いきさつは、ウイキペディアにくわしい。
選挙戦では、この手の個人攻撃は、いかにもアメリカらしく、ユーモラスでもあり、笑えぬ部分もありで、おどろかされるが、利害関係のまったくない日本の野次馬としては勉強になる。

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さっそく、「ロムニー候補に反対するイヌたち」というサイトがたちあがり、キャンペーンのTシャツやステッカーなどがネットで売られている。のりにのって、本も来月売り出されアマゾンで買える。ようやるわという感じだ。ぼくがマウスで描いたシェイマス像は、まるで似ていないと思う。

「事件」は、くりかえし、むしかえされて、動物保護団体からはごうごうたる非難のアラシがまきおこっている。マスメディアも取り上げた。「ニューヨーカー」誌の表紙にもなった。どこまでまじめなのか、なんとなくおかしい。
インタビューにも当のロムニー候補はどこ吹く風だが、夫人の「シェイマスは風を楽しんでいたのよ」のひとことが愛犬家の怒りに火に油ををそそいだとか。

選挙の足の引っ張り合いにはもってこいの話題で、まず共和党の仲間うちで、二回の選挙に利用され、ライバル候補者たちが飛びついた。選挙戦での誹謗、中傷は半端ではない。選挙コマーシャルビデオも放映された。
つぎは、本番の選挙戦の火ぶたが切られる。オバマ大統領陣営も、ちくちくと、動き始め、共和党筋からはオバマは少年のころイヌの肉を食ったという反撃も。
いやはや、ごくろうなことである。両陣営の健闘を祈ろう。イヌも食うまいが。

ぼくはシェイマスもアメリカの選挙のことも、最近訪れたこともないし、あっちのことは何も知らずに書いている。
ある日の朝日か毎日にのった小さな記事に興味をひかれて、ネットをひらいてみたら、「ドッグ オン ザ カールーフ」のストーリーは、執念深く追跡するマスコミに取り上げられていた。膨大な情報量である。ロムニー候補の人格を疑わせるもの、弁護するもの、いろいろだ。ネットに残された資料を追うだけでさまざまなことが見えてくるのに、いまさらながらデジタルの情報集積能力に驚いた。

四半世紀も前の過去の記事もすぐ探せるネットのアーカイブ力は、あらためてすごいと思った。わが国では、人のうわさも75日、水に流すし、新聞社はサーバーの維持費を節約してか、過去の資料がでてこない。小沢サンが過去なにをしたか、消費税についてどういったのか、皆忘れている。

投稿者 nansai : 11:24

2012年5月14日

五月十三日  ただになつかし、きょうは母の日。

八十五の翁となれど 母おもへば
ただになつかし きょうは母の日

歌人窪田空穂が詠んだ一首。いくつになっても子は親の子と、けさの「天声人語」が紹介した。

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「ただになつかし」か。こころにしみる。そうではあるが、「母をおもう」には、ぼくには、きれいさっぱり手がかりの記憶がまるで欠落している、顔も声もだ。昭和前期に若くして他界したから、あまりに幼すぎてぼくの記憶のフィルムが感光していなかった。

「年齢の割には、立派な歯が残っていますね。お手入れがんばってください。」先日思いがけず、歯医者さんではげまされた。
「丈夫な歯は、母親のを受け継いでいるのでしょうか。ろくに手入れしていないのに。」ときいてみたら、かならずしもそうではないとのクールな答えだった。
でも、傘寿をむかえた、ぼくの丈夫な歯は、母ゆずり、と思いたい。長持ちする丈夫な歯をありがとう。母の記憶がまるでないぼくは、歯に限らず母とは遺伝子でつながっているのだ、と思うことにしてきた。そう、いくつになっても、ぼく自体が、母ゆずりの存在なのだと。おかげさまで。

「母の日」も、母思う証しのカーネーションのプレゼントも、母の時代にはなかったなあ。合掌。

投稿者 nansai : 14:14

2012年5月11日

五月十一日 電子本が待ち遠しい。ぼくは、黒船大歓迎。

電子本に興味しんしんである。
無人島に一冊だけ本を持ってゆくとすれば、あなたは何を選ぶか。ぼくにはそんな一冊は思い浮かばないが、

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かさばらず重量ゼロの電子本なら、読書端末に1500冊はいるらしい。電池切れが心配だから、太陽光の発電受光板が必要だろうが。

わが国の出版界にも、電子書籍という黒船がやってきた。読書端末「キンドル」を引っ提げて、巨大ネット書店アマゾンの襲来だ。年末に発表する、楽しみにしてほしいと、来日したベゾス社長が言い切った。
しかし、アルファベット26文字で、本がつくられている電子書籍先進国と違って、この国は、縦組み、漢字かな混じりで文章が構成されている。
キンドルは、日本語とどう取り組むのか。普通のおばさんにやさしく使える読書端末は、どう落ち着くのか。デビューが待ち遠しい。
ただでさえ読書人口が減っているから、及び腰だった出版社も新聞社も、黒船「アマゾン」の本土上陸に対応せざるを得なくなった。しかし、読書評論家でもろ手をあげて賛成という向きは、少数派だろう。

初物食いのぼくは、物は試し、キンドルとソニーの端末を購入。
まず、まんがが人気らしいが、ぼくはパス。
文章を読むだけなら、ソニーリーダーは、まずまずか。文字の大きさが視力に応じて調節できるのは、高齢者にはありがたい。しかし、紙の本にくらべて、重さゼロはいいが、端末自体の重さは苦になる。購入できる本の数があまりに少ないのにがっかり。

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ページ単位で区切って読むことになるので、ゆっくりと玩味しつつ読みたい文章には適している。気に入った随筆や長編の数ページを、端末の画面で400文字くらいの文章をゆっくりよく噛んで読むのも、せっかちで飛ばし読みするぼくには、新鮮な感じだ。
内容の軽い読み物に向いている。筋を追いながらの飛ばし読みは、親指をすべらせれば、一枚づつめくるよりも、らく。アマゾンは、「シングルズ」という読み捨て型の電子読み物を1ドルくらいで発売し始めた。ニューヨークの地下鉄でおばさんたちがよみふけっているのは、ハーレクイーンかこの手の読み物らしい。

アマゾンのキンドルは、いまは英語版だが、端末価格が安い。IPADと同サイズで価格半分の、「キンドルファイヤー」が注目だ。アマゾンは、端末機器で利益を上げようとせず、電子書籍のダウンロードでもうける狙いは、壮大な仕組みだ。

電子本読者は、巨大書店の在庫のなかから、電子本価格のキンドル版を選ぶことになる。
アマゾンは、店頭でなくネットカタログで一冊ごとに詳しい説明を読みながら本を選ぶ。買う決心すれば、ワンクリックで、一冊の本の内容が、瞬時に、読書端末にもパソコンにも、ダウンロードされる。便利というより、快感である。書店の書棚をきょろきょろ探しまわるぼくのタイプにとっては、本の連鎖買いは、失敗も多いが、楽しみなのだ。
ソニーの「リード」は、本選びの説明が不足していて、この楽しみの手続きが複雑すぎる。
アマゾンとの決定的な差である。

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読書は、プロとアマに分かれる。万巻の書を集め資料を読み解くことで生計を立てているプロは、難解な書籍の内容を消化する鋭い歯と頑丈なあごを備えている。

電子本の端末利用は、あごも歯もまだ強くないアマチュアと学生、こどもに最適だ。教育への貢献は計り知れない。ぼくは、新書版、文庫版の「とれとれで廉価」電子版を切望している。朝日新聞のAスタンドやアマゾンの「シングルズ」はいい試みだ。ベストセラーが続出するだろう。

これからは、読書端末に応じた本づくり、教科書作りが、まったく新しい発想で開発されねばなるまい。
電子書籍は、文章だけでなく、動画、図表、音声、辞書を組み入れ、次のテーマに連鎖するリンクを縦横無尽にはりめぐらせる編集になるだろう。電子教科書の開発で、独習型の教育システムで一国の知識レベルが上がる。コンクリートの箱やダムよりも有効だ。国家百年の計だ。と、夢はふくらむ。

投稿者 nansai : 13:19