縦書きブログ「八軒家南斉」

WEB1グランプリ 準グランプリ受賞

2012年6月 8日

六月八日
尾を踏めどピクリともせぬトラの老い 宮本一夫

セパ交流戦で連敗のさなか、新聞の川柳投稿欄で家内が発見、「うまいものだなあ」と感じ入った。トラの尾を踏んだら、どうなるか!ただではすまんぞ、とすごんでみたいが。
笑えて、なにやら物悲しい。
トラの老いか。たしかに。わが身にひきくらべて、ひとごとではない。

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チームは、新監督以下ひたすらまじめで、石部金吉がそろいのユニホームを着ているように見える。形相も必死だ。
こちこちに緊張してか、とにかく打てない。統一球が打てない。だからホームランも少ない。ボール球を振っているからだと専門家はいう。
ひところは、三割打者がひしめいていたチームなのに。
一方不振をかこっていた巨人は楽天から野村の指導を受けた戦略参謀を迎え入れ、阪神の投手は丸裸にされ打ち崩された、と週刊誌にのっていた。

あまりの不振に観客席の怒号にたじろいで、打順を入れ替えた。
チャンスに凡退をくりかえす4番がベンチに、44歳の老いたカリスマ打者にかわった。でも2割台だ。自打球を足に当て動けなくなると、かわって42歳の代打の神様が守備につく。本来の4番はそのままベンチに。
これは異常事態だろう。テレビ解説の江夏が執拗に4番のメンツを傷つけてはいかんと繰り返す。やれやれ。

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寝ているトラを起こすのは至難のワザだろう。起きぬけ寝ボケまなこのトラを描くにも難儀した。
がんばっているが力不足で、交流戦ではパリーグ勢に競り負けて、Bクラスの4位は、ま、こんなところだろう。
タイガースは、梅雨の前に失速するのがつねで、なつかしい、むかしのタイガースが帰ってきたと思っている。切歯扼腕は、むだである。はしたない振る舞いなり。我慢と達観こそ、ファンのこころがけだ。
ここのところ、助っ人外人のマートン、ブラゼルがやっと打ち始めたのが、救いだ。

さて、問題は、トラの老いだ。

長年念力を照射して、トラを応援した聖トラキチ、北杜夫氏もついに亡くなられた。
五十年でタイガースの優勝を4度も見られてしあわせだった。と、エッセイ集「マンボウ阪神狂時代」(新潮文庫)に述懐していわく、しかし、
「阪神の課題は新陳代謝だ。安泰でもなんでもない。
という風にすぐに悲観的に考えてしまうのが僕たち長年の低迷阪神を応援してきた阪神ファンの性なのでしょうか。」
阪神に効く不老長寿の妙薬はない。医者でもある聖トラキチは、勝っても浮かれることはなかった。
(ちなみに、このイラストは、お手上げバンザイではない。優勝決定の瞬間のハイタッチをTシャツ用に早手回しに描いたもの。万が一にそなえて、頭おかしいんと違うか、二枚も描いた。)
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新聞には、阪神の破れた日は、大阪版でも虫眼鏡でみなければならぬほど、ごくごくちいさい。
なのに、人気選手の個人記録の扱いは、ばかでかい。どういうこっちゃ。
金本1500打点、44歳、なお努力の鉄人.史上最年長記録と大見出しにある。落合選手をぬいて、張本選手に迫ろうとする打点。

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個人記録なら、いうてすまんが、この絵巻のスクロールの長さである。中身はいわない。

この絵巻も、気息えんえんながら、かろうじてまだ続いている。
数えてみたら、間もなく500本になる。横スクロールの長さは、500メートル。天満橋を越えそうだ。
プリントアウトすると、2000ページ。紙の本に綴じたら、一冊なんぼになるやろう?見積ってもらったら、ふうん、一冊六十万円だそうな。

日本文にいちばんぴったりの縦書き、かつ横スクロールのブロッグ。こんな前人未踏のあほな試みはだれもしない。生来なまけもののぼくが、ほとんど犬かき状態でも溺れず、ぼちぼちつづけていたら、カネモト選手なみに記録がついてくる。あたりまえだ。

こんな試みでも、高邁!な目的が、ふたつある。
いまや横組み全盛のウエブ上でも、日本語文章の縦組みの読みやすさを実証したい。
あわせてペイントとマウスで、アボリジニもびっくりの絵をマウスで描いて文章にそえたい。
笑うなかれ、ぼくの師匠は、ニューヨークタイムス、ニューヨーカーの作家たちだ。

ところが、心細いことになっている。
この縦組みを開発してくれたプログラマーが、協力会社から退社して、いまや、この縦書きプログラムは、さながら洋上を漂うイカダのような存在である。帰るべき港も造船所もない。前途は洋洋なのになあ、波高し。

こころざしと内容はともかく、横スクロールの長さでギネスに登録できんかなあと、冗談で友人にいうと、あほな、とクールに一蹴された。ごもっともだ。

投稿者 nansai : 11:15